ウエウエテナンゴの一日目。
低く垂れ込める雲。
標高が高いからか、今日は雨が濃霧となってウエウエテナンゴを包んでいます。
目指すのは、ウィキソックという地域にある小さいけれどとびきりの農園。
ぬかるみのなか、ハンドルをとられながらも車が斜面を登り続けられるのは、薄い土の層の下が岩肌だからでしょう。
厚い雲で遮られて日差しがないので、昼間でも標高による寒暖の差を身体で感じることができました。
標高が上がるにつれて風が冷たく感じてきます。
道の両脇では、この天候で仕事のなくなったピッカー(コーヒーの実を摘む人)達が、所在なげに立っていました。
乾季のこの時期に雨が降ってしまうと心配なのは、雨に刺激を受けてコーヒーの樹が早々と花を咲かせてしまうこと。
実った果実に注がれるべき養分が、咲くハズのなかった新しい花にも使われてしまうことになって、実にも花にも充分に栄養が行き渡らなくなります。
つまり、今年のコーヒーばかりか、来年のコーヒーにも影響が及ぶことになってしまいます。
もうひとつが、オホデガヨという病気。
コーヒーの歴史にその名が知られるサビ病は、低地で発生する病気なのですが、高地産のスペシャルティコーヒーにとっての脅威となるのが、オホデガヨ。
高地で雨が降り、風がそよがずに湿度が上がり、低温が続くと、チェリーから滴り落ちる水滴の中で、オホデガヨが生まれます。
滴り落ちた葉の上でオホデガヨは拡がり、葉を枯らしてゆき、次々と落葉させて、とくに力のない古い樹などをいとも簡単に殺してしまいます。
農園のあるウィキソック付近では、まださほど多くはないもののともに散見されます。
美味しいコーヒーは必ず採れるものですが、その数はもちろん、全体の品質と収穫量は落ちてしまいます。
濃霧とぬかるみのなか、ときに横滑りしながらも四輪駆動車は農園に辿り着きました。
今度は私たちが、霧雨と滑りやすくなった急斜面に足をとられ、ときに転び泥だらけになりながら、四輪駆動車のごとく農園の頂上エリアを目指し登ってゆきます。
そこで見ることができたものは。
コーヒーの実そのものが持つ個性的な香りや味わい。
そんな限られたコーヒーがスペシャルティコーヒー。
そのスペシャルティコーヒーはもとより、テロワールと呼ばれるその土地々々の個性的な魅力は、いかに優れたマイクロクライメートや個性的な自然環境があっても、それだけでは決して生み出されないこと。
あくまでも同じように優れた人の手が加わったヒューマンテロワールが必らず必要にやること。
いままでずっと心のなかで感じていたことを目の当たりにすることになります。
グアテマラ ウエウエテナンゴより、
つづく